MELTz

手指運動リハビリテーションシステム
「MELTz (メルツ)」

手指麻痺患者ごとの症状に合わせた
ニューロリハビリテーションを実現

「MELTz」は、手指麻痺患者さんの手指のニューロリハビリテーションをサポートする装置です。脳神経科学に基づいたニューロリハビリテーションを安定的かつ継続的にサポートし、手や指の動かし方の再学習を促します。症例に合わせたモードやメニューによって、手指運動リハビリテーションの効果的な実施を支援します。

セットアップからトレーニングまで4ステップで完了

  • MELTzは、モニターを搭載した本体と手に装着するサポーターとハンドユニット、筋電位を測定するEMGケーブルで構成されています。患者さんはEMGケーブルや電極、ハンドユニットを装着し、椅子に座ってトレーニングを行います。ハンドユニットは、母指ユニットを付け替えることで左右どちらの手にも装着可能です。機器使用前の準備が完了してから、本体のシステムを起動します。

    • セラピストが操作する本体と、患者さんが装着するハンドユニットやサポーター、EMGケーブルなど、トレーニングに必要な機器を用意します。

    • トレーニング実施には、上肢サポート器具を固定するテーブルと、患者さんが座る椅子が必要です。左手をトレーニングする場合は、装置を左側に、右手をトレーニングする場合は装置を右側に設置します。

    • 電極にEMGケーブルを取り付け、装着する手に合わせてハンドユニットをセットします。本体の電源を入れ、システムを起動させ、機器の初期化を行います。初期化中、指同士が衝突しないように母指ユニットの向きを調整し、初期化画面の「▶」ボタンを押します。

  • 患者さんが装着する機器のセットアップを行います。EMGケーブルバンドを患者さんの上腕に固定し、基準電極を貼り付けたあと、3つの電極を腕に貼り付けていきます。専用サポーターとハンドユニットを装着し、指の間隔や各指の長さに合わせて調整していきます。

    • 患者さんの上腕にEMGケーブルバンドを巻いて固定します。基準電極(GND/RLD)を肘部分に貼り付けたあと、「電極Ch1」を総指伸筋、「電極Ch2」を深指屈筋、「電極Ch3」を浅指屈筋に貼り付けます。

    • サポーターのハンドユニットアタッチメントを手の甲側に向け、サポーターに手を通し、ベルクロを締めます。サポーターの上からハンドユニットを装着し、MPベルトで固定します。

    • 指間調整ロックレバーを起こして、指の開き具合を調整します。また、各指の長さに合わせてハンドユニットの指サイズを調整し、DIP関節部分をDIPベルトで固定します。

    • 母指ユニットを母指に装着します。トレーニング内容に合わせて、母指関節の位置を調整します。

  • 本体側の作動範囲調節のセットアップを行います。伸展モードで、5指の伸展作動範囲の設定、屈曲モードで5指の屈曲側の作動範囲を調整します。「速度」「屈曲力」「伸展力」の各項目の調整も可能で、作動範囲の設定は保存できます。アセスメントを実行すると、「筋電と力」「AROM」「痙縮」の3つのアセスメントメニューを選択できます。

    • 「作動範囲を調整する」ボタンを押し、伸展または屈曲を選択して各指の作動範囲を調整します。「▲」ボタン( 伸展側移動)、「▼」ボタン(屈曲側移動)を押し、5指の作動範囲を調整します。4指をまとめて設定することもできます。

    • 「速度」「屈曲力」「伸展力」をそれぞれ10段階で調節できます。「速度」は機器の作動速度の調整、「屈曲力」「伸展力」はそれぞれの方向へのモーター出力を調整できます。

    • アセスメントを実行する場合は、「アセスメント(任意)」の【アセスメントを実行する】を押します。「筋電と力」「AROM」「痙縮」を測定します。

  • トレーニングを実施します。「パッシブ」「アクティブ指示」「アクティブフリー」の3モードから実施するトレーニングを選択します。どのモードも、トレーニング開始前に、指示スタイルや運動パターン、回数などの設定を行います。

    パッシブモード

    筋電を使わず作動する

    • 左下のトレーニングボックスの「タスク」「回数」「進行状況」を押して運動パターンを設定。「タスク」ダブでは、各肢位の保持時間を設定します。「回数」タブでは、動作回数やセット回数、セット間の休憩時間を設定します。「進行状況」タブでは、リラックス時の動作を設定します。

    • 「▶︎」ボタンを押すとトレーニングが始まります。

    • A 「累計トレーニング時間」と「総経過時間」を表示。
      B 動作指示とカウントダウン数字を表示。
      C 「一時停止」ボタンと「停止」ボタン。
      D 実施中のタスクの経過時間を表示。進捗を示すステイタスバー。設定した指示の動作回数やセット回数の進捗を表示。
      E 作動範囲設定を表示。

    アクティブ指示モード

    筋電で作動を制御し、設定した指示に従ってトレーニングを実施する

    • 左下のトレーニングボックスの「タスク」「回数」「進行状況」を押して運動パターンを設定。「タスク」タブで、3つの運動パターン「グー、パー、リラックス」「グー、リラックス」「パー、リラックス」と時間を設定します。「回数」タブで動作回数やセット回数、セット間休憩を設定します。「進行状況」タブでは制限モードのON/OFFを設定します。

    • 「▶︎」ボタンを押すとキャリブレーションが自動で始まり、指示に合わせて運動(意図)を行うと機器がそれを識別します。機器はトレーニング中、運動(意図)に合わせて運動のアシストを行います。
      ※手動でキャリブレーションの設定をすることもできます。

    • A 「累計トレーニング時間」と「総経過時間」を表示。
      B 動作指示とカウントダウン数字を表示。
      C 「一時停止」ボタンと「停止」ボタン。
      D 実施中のタスクの経過時間を表示。進捗を示すステイタスバー。設定した指示の動作回数やセット回数の進捗を表示。
      E 作動範囲設定を表示。
      F 筋電パターンの識別状態をグラフ位置と色で表現。
      G 筋電波形と識別状態(色)を表示。

    アクティブフリーモード

    筋電で作動を制御し、患者さんの任意のタイミングの運動でトレーニングを実施する

    • メインボックスに「開始するにはキャリブレーションが必要です」と表示がある場合、「キャリブレーションを行い、トレーニングを開始する」ボタンを押します。指示に従い運動動作を実施し、キャリブレーションを実施します。

    • 自動キャリブレーションでの筋電の識別がうまくいかない場合、手動キャリブレーションを実施します。機器を停止し、筋電パターンボックス内のキャリブレーションボタンを押します。左側のキャリブレーションモードボックスから手動を選択します。

    • A 「累計トレーニング時間」と「総経過時間」を表示。
      B 「一時停止」ボタンと「停止」ボタン。
      C 実施中のタスクの経過時間を表示。進捗を示すステイタスバー。設定した指示の動作回数やセット回数の進捗を表示。
      D 作動範囲設定を表示。
      E 筋電パターンの識別状態をグラフ位置と色で表現。
      F 筋電波形と識別状態(色)を表示。

MELTzがニューロリハビリテーションに
もたらすメリット

脳卒中に伴う身体の麻痺症状や運動機能の低下は、脳の運動に関わる部位の損傷によって引き起こされます。したがって、運動機能の回復には、損傷した脳の機能を再構築し、脳神経系が運動の仕方を再学習する必要があります。

脳神経経路の再構築によって身体の運動機能を再学習する、脳神経科学に基づいた新しいリハビリテーションの手法がニューロリハビリテーションです。

MELTzは独自のアルゴリズムAIにより、前腕の筋肉の電気信号を総合的に分析。患者さんが行おうとしている手の動きを認識し、ロボットのアシストによって、同じ動作を何度も正確に再現することで、より多くのリハビリテーション機会を提供できます。運動意図に併せた動作補助を行うことによって、運動を司る脳神経系の再学習を促します。

MELTzを支える
3つのコアテクノロジー

生体信号
AI解析とアルゴリズム
生体模倣ロボット

MELTzは、サイボーグ事業を行うベンチャー企業であるMELTINのコアテクロジー、「生体信号の高感度測定技術」と「生体模倣ロボット技術」に加え、「独自のアルゴリズムを搭載したAIによる解析技術」によって構成しています。筋電データを高感度に測定し、それをAIが解析することで装着者の意図を瞬時に読み取り、リアルタイムでロボットの動作に変換することで、運動・動作のアシストやフィードバックを行っています。

生体信号
コアテクノロジー1
高速、高感度に捉える「生体信号」
筋電は、脳の運動指令を伝える筋肉の電気信号です。MELTzは前腕部に貼り付けたセンサーを介して、1秒間に約1000回もの膨大な筋電データを測定し、高速かつ高精度な解析を介してロボットの動きに変換し、リアルタイムに手指運動補助を行います。意図と動きが瞬時に連動することで、脳の再学習を促すことが期待されます。電極センサーおよび測定システムの最適化で高感度測定を実現し、患者さんの微弱な筋電も捉えることができます。
AI解析とアルゴリズム
コアテクノロジー2
「独自のアルゴリズムを搭載したAI」
MELTzは、筋電データを独自のアルゴリズムを搭載したAIで総合的に解析することで、装着者が手指を開こうとしているのか、それとも閉じようとしているのかなどを瞬時に識別し、手の動きをアシストします。ニューロリハビリテーションに特化した新しい解析技術が、効果的なリハビリテーションにつながる運動アシストの提供を実現しています。
生体模倣ロボット
コアテクノロジー3
繊細さと力強さを備えた「生体模倣ロボット技術」
MELTINは、生体模倣をベースとした人の身体の動きを再現するロボット技術を有しています。これによって、繊細さや器用さ、力強さを備えた指の動きの再現が可能となっています。この繊細な動きを再現する技術の応用によって、作業療法に欠かせない「握る」や「つまむ」という動作を実現。手指に装着した装置をワイヤー駆動構造によって力強く動かし、手を握り込んだ状態から自力で開くことのできない人の手の運動アシストに十分な力を生み出しています。

安全で簡単、使いやすく
続けやすいMELTzのデザイン

MELTzは、プロダクトデザイン、UIデザイン、UXデザインの各視点から、安全で簡単に使える、使いやすい装置を目指しています。サイズ調整による装着しやすさはもちろん、不安感を取り除く画面表示など、安心感を伴う体験を提供。無理なく繰り返し使い続けられるデザインです。

プロダクトデザイン
手のサイズに関わらず装着可能で先進的な形状
MELTzは、ハンドユニットに細かな調整機能を設けているため、指の長さなどが異なる、さまざまな装着者の手にフィットします。ワイヤーを動かすモーターや生体信号を解析するためのコンピューターなどを本体側に内蔵することで、ハンドユニット自体は500g以下。一定以上の力が出ないように制御を施すことで、装着者の安全を担保しています。生体信号やAIなど先端技術を搭載したMELTzらしい、先進的なイメージを形にしています。
UI(ユーザーインターフェイス)デザイン
セラピストを迷わせず患者にやる気をもたらす
開始から完了まで、画面の指示に従って操作を進めるだけで簡単にトレーニングが完了するのもMELTzの特長です。患者さんそれぞれの症例に合わせた多彩なトレーニングの設定も容易です。装着完了から1分以内に筋電解析が完了し、リハビリテーションを開始できます。トレーニング結果をリアルタイムでビジュアル化し、画面に表示できるので、患者さんがリハビリテーションを続けるモチベーションアップにもつながります。
UX(ユーザーエクスペリエンス)デザイン
リハビリテーションに集中できるよう最適化
セラピストにとっての扱いやすさを向上させると同時に、患者さんがリハビリテーションに集中できるよう、ハンドユニットなどの機器も画面内も、MELTzのあらゆる構成要素がデザインされています。ハンドユニットの装着性を高め、トレーニングメニューの設定を簡単に行えるなどのさまざまな工夫によって、リハビリテーションを、安心感を伴う一つの体験として提供。続けやすさや、リハビリテーション効果の最大化を実現しています。

医療機器情報

  • 一般的名称

    能動型展伸・屈伸回転運動装置

  • 販売名

    MELTz 手指運動リハビリテーションシステム

  • クラス分類

    クラスII 管理医療機器(特定保守管理医療機器)

  • 医療機器認証番号

    304AIBZX00014000

  • 添付文書

  • 電源

    • 電圧

      AC 100 V

    • 周波数

      50 / 60 Hz

    • 電力

      最大200 VA

  • サイズ

    W 540 × D 735 × H 1290 mm

  • 重量

    約50 kg

  • 動作モード

    連続

  • 電撃に対する保護

    クラスⅠ機器 / BF形装着部

  • 使用環境条件

    • 温度

      5~35℃

    • 湿度

      10~90%RH

    • 気圧

      800~1060hPa

  • 保管環境条件

    • 温度

      -20~60℃

    • 湿度

      10~90%RH

    • 気圧

      800~1060hPa

  • 電気安全規格

    JIS T 0601-1:2017, JIS T 0601-1-2:2012

よくある質問

適応患者に関して
  • A. 禁忌となる症例や患者さんについての詳細は下記添付文章の内容をご参照ください
  • A. 機器には下記3つのモードがあり、症状に合わせてトレーニングが可能です。

    筋電が非常に弱い患者さんでもパッシブモードやアクティブ指示モード(制限モード)などでトレーニングが可能です。

    • パッシブモード:筋電を使わず、トレーニングを実施する
    • アクティブ指示モード:筋電で制御し、設定した指示に従ってトレーニングを実施する
    • アクティブフリーモード:筋電で制御し、患者さんの任意のタイミングでトレーニングを実施する
  • A. 患者さんの安全を担保するために一定以上の力が出ないように制御を行っています。また症状に応じて動作スピードも調整でき、より安全に使用することができます。
  • A. 機器を取り付けた手~前腕を置いて免荷した中でのトレーニングを可能とするFRETOアームバランサー(上肢サポート器具)のオプションがございます。
特長に関して
  • A. 脳神経科学に基づいたリハビリテーションの手法で、患者さんの生体信号をAIが分析することで、脳卒中などによる片麻痺を有する方が手をどう動かしたいかを読み取り、その意図に準じて動くよう手指運動をアシストします。この機器によって意図に準じた動きを繰り返すことで、脳が手の動かし方を再度学習することを目指しています。
使い方に関して
  • A. 基本的な装着方法は、当HPサイトをご覧ください。装着手順のほか、症例ごとの使用方法を動画でご紹介しています。
トラブルやメンテナンスに関して
  • A. 耐用期間は6年です。機器の安全と性能を維持するため、年1回の保守点検を推奨します。
  • A. 電極は消耗品です。その他、サポーターは消耗状態に応じて交換が必要になります。
製品導入に関して
  • A. 導入のご検討に必要なご要望については下記の販売元(住友ファーマ株式会社)のお問い合わせフォームよりご連絡ください。
  • A. 介護施設においても医師の監督下で行われるリハビリテーションに用いていただくことはできます。
  • A. 営業スタッフによるデモや、病院・施設様に対しての貸出は可能です。ご希望の場合は、下記の販売元(住友ファーマ株式会社)のお問い合わせフォームよりご連絡ください。

製品導入等についての
お問い合わせ

本製品の導入等に関するお問い合わせは、以下のお問い合わせフォームから住友ファーマ株式会社フロンティア事業推進室にご連絡ください。

技術や研究についての
お問い合わせ

本製品の技術・研究に関するお問い合わせは、以下、MELTINまでお願いいたします。
MELTINとは?
2013年創業のサイボーグ技術開発のベンチャー企業です。独自の「生体信号処理技術」と、人の身体を再現する「ロボット技術」という2つのコアテクノロジーを確立し、「アバター」「医療」の2つの軸で、新領域のサイボーグビジネスを展開しています。2016年には世界初のサイボーグオリンピックに出場。2018年には、サイボーグ技術を用いたアバターロボットのコンセプトモデル「MELTANT-α」を、2020年には、作業現場での実証実験用「MELTANT-β」を発表しました。

MELTz製品について

MELTz事業は2024年6月17日付で住友ファーマ100%子会社のFrontAct株式会社に事業譲渡しました。つきましては、「FrontAct株式会社のMELTz製品のページ」をご覧ください。